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東京マラソン2019 秘書の応援記

2019/3/25

スタート時から雨が降り、気温は5.7度。レースが進むにつれて雨は激しくなり、中盤には気温4.7度まで下がっていった。平坦なコースで好記録が期待されたが、天候に泣いた。(東京マラソン公式レポートより)

9時10分、レースがスタート。

私はアプリ「応援ナビ!」に

・誇るべき後輩、大迫(早大体育会競争部OB、27歳)

・水泳部同期の五十嵐君(早大体育会水泳部水球部門OB、㈱IGAコンサルティング代表取締役、47歳)

・杉山先生(早大マジック同好会OB、鳳和虎ノ門法律事務所長、45歳)

※ビブナンバー順。

を設定、アイコンも走り出す。

大迫が最前列からスタートする一方で、五十嵐君は14分23秒後、杉山先生は26分54秒後にそれぞれスタートラインを通過。

大迫以外の二人は棄権も案じられたが、スタートを確認してスマホを握る手にも力が入る。

10時30分過ぎ、テレビで大迫のリタイアを見届けた夫が、

「雨で寒いなか杉山先生が頑張っている。応援に行こう」。

応援ナビの到着予想時刻と地下鉄路線図を見比べて、目標を27km地点の水天宮前に定め、出発。

12時過ぎ、19km付近で五十嵐君がストップ。

そして、遅れてきた杉山先生のアイコンも同じ場所で止まり、ぴったり重なった。

地下鉄乗り継ぎ中の夫は、「大変だ、事故かな。先生がかわいそうだ。迎えに行こう。」とスマホ画面をピンチアウト。

すると、現れたのはトイレのピクトグラム。

たかがトイレ、されど、私が応援しているけど、互いには見ず知らずの二人が同じ場所で同時にトイレ休憩だなんて。

この二人は、3年の差こそあれ同じキャンパスで同じ時代に青春の日々を過ごし、昨年に東京マラソンに初当選して同じように半分驚き半分嘆き、そして今年も二人そろって連続当選してさらに驚き、嘆いたのである。

唯一違うのは、昨年、五十嵐君は完走したけど、杉山先生はそれができなかったこと。

杉山先生、今年こそ頑張れ。

二人のアイコンが、再び動き始めた。

12時18分、杉山先生と五十嵐君が20km通過。

息を吹き返したのか、スタートからずっと五十嵐君に10分以上の遅れをとっていた杉山先生が、逆転して14秒先行。

計測地点ごとの通過順位もどんどん上がってる。

(10km27712位→15km27478位→20km26803位)

弁護士だけあって戦略的!今年の作戦は、ネガティブ・スプリット?怒涛の追い上げ、開始なの!?

地下鉄車内なのに、応援ボルテージは早くも振り切れMax。

12時30分、私たちは水天宮前に到着、給水所後方に陣取る。

二人のアイコンが刻々と近づいてくる。

杉山先生に先んじて、五十嵐君が通過。

「頑張れー。」「頑張ってー。」

気づいた五十嵐君は手を振り応え、駆けてゆく。

次は杉山先生だ。

雨は降りやむ気配なく、ランナーは多数がレインコートを着ていて、ビブは見にくい。

アイコンが充分に近づいた、そのとき。

どうして?というくらい密度濃く群れ固まった走者の一団が押し寄せ、通り過ぎた。

みな、フードやキャップをかぶり、かぶっていなくてもずぶ濡れで髪型はわからなくなってるし、ビブはよれよれだし、もう、どれが誰なんだか、何もわからない。

まさか、今の中にはいないよね?

願いに反し、杉山先生のアイコンは水天宮を過ぎ、遠ざかって行った。

不覚をとった。

でも、もう私も子らもずぶ濡れだし、寒くて凍えてるし、お腹もすいた。

杉山先生に声をかけることは叶わなかったが、明日事情を話せば、きっとわかってくれるはずだ。

夫は違った。

「五十嵐君だけ応援して杉山先生を応援できていないなんて、あんまりだ。」

夫、いつからそんなに杉山先生を好きになったのだろう。

私たちは、日比谷へ向かった。

誤算は、いくつもあった。

子らがトイレへ行きたがったこと、日比谷駅の地下道が走り終えた参加者や観衆でごった返していたこと、地上への上り口が制限されていたこと。

ようやく沿道に出ると、目の前を最後尾のランナーが通り過ぎた。

すぐにパイロンが置かれて仕切られ、人手で集めたごみを収集車が積載して行く。

嫌な予感は、あった。

先生のアイコンが通過したのはほんのわずか前、後方すぎる。

しかも次の収容関門は、昨年途中棄権を余儀なくされた、34.2km札の辻交差点。

鬼門だ。

寒さと疲労で子らが歩けなくなったので、私たちは杉山先生が品川を折り返して来ると信じて、日比谷公園で待つことにした。

順調なら、レースは残り2kmという地点。

どのランナーも疲労の色濃いが、ゴール目前とあってみな顔を上げて走り行く、のに。

やや時間を要して札の辻に到達した杉山先生のアイコンは、そこで止まり、二度と動くことはなかった。

16時3分、応援を諦めた私たちが家にたどり着いてほどなく、スマホが五十嵐君がゴールしたことを告げた。

昨年、自称ビギナーズラックで初出場を果たしたものの、幸運を活かしきれず、

完走率96.2%のレースでリタイアに終わった杉山先生。

(フルマラソン男子に限れば、出走27476名、完走26611名、途中棄権865名、完走率96.9%) 

他の弁護士がホームページなどで「東京マラソン完走」と自己紹介するのを目にして心に期すものがあったようで、

今年は、質・量ともに昨年をしのぐ準備をしてのぞみました。

今年の戦術は、やはり早大OBの金哲彦のメソッドにのっとったもの。

(昨年は、コニカミノルタ駅伝チームの方法論によるもの)。

執務後には、自宅まで頻繁に歩いて帰宅、

体幹トレーニングに手ごたえを感じ、

休日のラン練習は、雪などの気象条件まで考慮に入れ、計画・管理して取組むなど、

周囲にも期待を抱かせる内容でした。

それだけに。

今大会の完走率は、史上2番目に低い94.3%と公表されていますが、フルマラソン男子に限れば少し上がって95.0%。

(出走者28663人中、完走は27230人、途中棄権者は1433人)

今年は、年賀状で東京マラソン出場を宣言したこともあり、たくさんのあたたかいお言葉を頂戴しました。

寄せられたこれらのお声に、杉山先生はどれだけ励まされたことかと思います。

応援してくださったみなさまには、本当にありがとうございました。