長時間労働を減らすため、厚生労働省において議論が始まりました
2016/9/13
9月9日、有識者会議の初会合があり、残業時間の上限を規制するための方策について、検討が始まりました。
日本は、欧米諸国に比べ長時間労働の割合が高く、また、過労死が多いことも問題になっています。
そもそも、労働基準法では、労働時間は一日8時間、週40時間までと定められており、これを「超えて働かせてはならない」と明記されています。
ところが、これでは会社が回らないということで、労使が合意をすれば、残業が可能になります。
この労使協定は労働基準法第36条に規定されているため、「36(サブロク)協定」と呼ばれています。
これによって、残業時間の範囲は、月45時間、年間360時間まで許されることになります。
但し、これは行政指導の基準で、法的な強制力はありません。
さらに、特別な事情がある場合には、特別条項付36協定を結べば、事実上残業時間を青天井にできる抜け穴があり、過労死の労災認定基準である月80時間を上回る残業時間を上限としている企業も、実際のところ少なくありません。
こうした現状は、政府が掲げる「働き方改革」の中で見直しを迫られることになり、今年6月に閣議決定された「1億総活躍プラン」に「36協定のあり方の検討」が項目として盛り込まれることとなりました。
厚労省の検討会は、年内に論点整理を終える予定ですが、難しい課題が山積しています。
まず、残業の上限の水準を何時間に設定するか。例えば45時間とするのか、過労死ラインの80時間とするのか。
または、他の考え方を適用するのか。
次に、運輸業やIT業界など過剰な長時間労働が深刻な業界がある中で、適用の範囲について、業種や現場に応じてある程度の融通性を持たせるのか、例外をどこまで認めるのか。
そして、強制力をもたせるために、上限を明記して罰則を適用するのか、行政指導にとどめるのか…。
また、働く人々が、短い時間で効率よく働き、仕事も家庭も両立できる賃金体系も必要になるでしょう。
「働き方」の改革が現実のものとなるのか。私たちも注意して議論を見守りたいものです。