従業員からパワハラやセクハラの申告があった場合、企業として適切に対応することが求められます。企業側が当事者の異動や懲戒処分など何らかの対応を前提として、客観的な事実認定を行うためのプロセスが社内調査であり、それを行うチームが社内調査委員会です。社内調査委員会には、弁護士など外部の専門家が加わることもあります。
社内調査で客観的に認定された事実は、当事者に対する対応や再発防止策の策定といった企業内での目的のための判断材料となるのみならず、被害者が加害者や企業を相手に訴訟を起こした場合、裁判で証拠として扱われる可能性もあります。適正に社内調査を行うには、知識と経験が必要です。
聞き取りの順序
通常は、被害者⇒目撃者⇒加害者の順番に聞き取りを行います。客観的な事実認証のために証拠固めをするうえで聞き取りの順番は重要ですので、慎重に検討する必要があります。
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聞き取る内容については、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、Why(何故)、How(どのように)、How Much(金銭は)、Howmany(回数、時間)、How long(どれくらいの期間)行ったか、というような客観的事実を中心に拾っていくように心がけます。
行われた行為がハラスメントであるか否かの判断は、被害者側の主観的な受け止め方や加害者側の意図だけではなく、客観的な事実も重要なためです。
つまり、Aからパワハラを受けたとの申告がなされたのに対して、Aが、自分の行為はパワハラではなく指導の一環であったと主張した場合を想定してみましょう。この場合、指導の範囲内と言えるのかが問題となりますが、「死ね」などと発言したことが認められれば、一般的に、通常の業務指導において自殺を求めることは考えにくいため、「指導の一環」という主張は認められず、Aの行為はパワハラと認定される可能性が高いということになります。
客観的な事実の重要性について、もうひとつ例を挙げてみましょう。企業が、業務能力に問題がある女性を解雇し、当事者である女性が解雇は違法であると主張するケースです。企業側が、解雇は当事者の能力不足が原因であると主張したとしても、この女性が妊娠中だったことが認められれば、マタハラによる違法な解雇であると判断される可能性が高いと言えます。
外部相談窓口の設置
不祥事の発見に繋がる匿名性の高い外部相談窓口を設けることが有効です。
ご注意ください
当事者が会社の判断に納得しなかった場合は、裁判になることがあります。被害者から、セクハラやパワハラの防止策を講じていなかったと訴えられることもあります。企業としては、これらの可能性を配慮してふるまい行動すべきです。漠然とした対応ではなく、目的を見据えた完成度の高い調査プランをたてて臨むことが肝要です。
case 1 社内調査の規程がない企業様
初期段階から当職らが調査委員会のメンバーとして参加します。趣旨に合った調査委員の選定から、想定問答集の作成、最終的な対応(処分内容)、社内調査規程作成までトータルにサポートいたします。
case 2 社内調査の規程は整備されているものの、運用経験がない企業様
社内調査のメンバーの一員として当職らが参加することで、目的と着地点を見極めた調査の進行、ハンドリングが可能になります。
point 1 想定問答について
パワハラやセクハラはデリケートな問題です。想定問答を作成する際には、質問の組み立て方と聞き方が重要なポイントになります。不適切な質問は、かえって問題を大きくすることになりかねませんので慎重に作成します。
point 2 処分について
減給、降格、異動、解雇など、当事者に対する対応は判断を間違えると訴訟に発展する恐れがあります。また異動処分については、結果として社内がギクシャクしたり、禍根を残したりすることになるケースもあるため、細やかな配慮が必要です。